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追憶日記

管理人のくだらない日常の云々・・・

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アクラミです。
それでもいいというかたのみうぞ。


~節分の日の油断~


「アックセルちゃぁ~ん!!」

部屋で一人静かに読書を楽しんでいた青年アクセルの耳に
魔王の妻・リリスが如く恐ろしい声が聞こえてきた。

毎度許可なく部屋のロックを解除し入り込んでくる彼女の名は、
エクセレン・ブロウニング・・・、アクセルは彼女が非常に苦手であった。

「・・・・(今日はなんだ?)」

悪戯小僧のようにニマニマ笑う彼女の両隣には、
命の恩人ともいえるアルフィミィと、
かつての部下、ラミアがこれまた毎度のようにいる。
アクセルの背中に嫌な汗が流れ始めた。
この3人で現れた時は嫌なことが起こる前兆、それ以外ないからだ。

「フフ・・・ねぇ?アクセ・・・」
「無理だ!」

何かを言う前にアクセルは言葉を遮り本に視線を戻す。
するとエクセレンはことのほか大きな声を出してわざとらしく言うのであった。

「え~!!??ただ本を読んでいるだけなのに話も聞かないで断るの~??
 ラミアちゃんが一人で部屋に尋ねてきたときは・・もがががが!!」

この女は一体何をドコまで知っているというのか?
とにかくそれ以上言われてなるものかと、
ダッシュでエクセレンまで歩み寄ると手で口を塞ぐのだった。
見下ろせば口を塞がれているとはいえ、エクセレンはニヤニヤ笑っている。
はぁ・・と、大きくため息を吐きながら塞いでいた手を離し、

「は、話だけは聞く・・・」

と、諦めながら言うのであった。
そんな彼の様子にラミアが薄く笑ったのをアクセルは気づかなかったようだ。















「節分?」

ラミアが淹れてくれたコーヒーを4人で飲みながら始まった会話に
アクセルは首をかしげた。

「・・・まさかこの俺に鬼をやれとか言うんじゃないだろうな?」
「まさか!違うわよん!!鬼役はもう決まっているから安心して!」
「・・違うのか??(ならなんだ??)」
「ラミアちゃんから聞いたんだけど、シャドウミラーでも豆まきはしてたんでしょ?」

チラッと隣に座っているラミアに微笑みかけるながら再度伺うと、
ラミアは小さく頷いて肯定した。

「ええ、やってやがりました、鬼はそれように作ったWシリーズでございましたわ・・ウフ」
「えぇぇぇ??わざわざそれようの子がいたの??」
「はいな・・・ウフ」
「おい、ラミア!それはちょっと違うぞ・・これがな」

レモンは一体どういう説明をしていたのか?
頭を抱えたい気持ちでいっぱいのアクセルであったが、
ラミアの教えたシャドウミラーの豆まきの情報を正しく訂正するのだった。

「違う、でございますですか??・・・ウフ」
「ああ、違う・・・第一、毎年鬼をやっていたのは15・・・
 ではなくウォーダンだ・・・これがな」
「え?」
「うっそん」
「レモンが面白がってやらせていたんだ・・・。
 流石に少し気の毒に感じたがヤツがやらなければ
 俺に回ってきそうだったから放っておいた」

アクセルの説明にラミアは合点がいったようにそういえば・・・と思うのだった。

「そういわれましたら、節分の日はウォーダンを見かけたことが
 なかったような気もしなくもないのでございますことね・・・ウフ」
「へぇ・・・、あの顔で鬼をねぇ・・・」
「(・・・顔は関係ないと思うが)で、シャドウミラーで豆まきをしていたことが何なんだ?」

話がそれてきてしまっているので、アクセルは自ら話を元に戻していく。
早く用件を聞いて追い出してしまいたいのだ。
かかわるとロクなことがない、ここ数ヶ月でアクセルが学んだことだ。

「そうそう、そうだったわねん。
 シャドウミラーは豆まきの豆を特別な豆でやっていたんでしょ?」
「・・・ああ、特別というか・・・レモン特性の当りつき豆だ」
「そうらしいわね。で、その話を参考に私達も今年は特別な豆にしてみたのよ」
「・・・・で?」

『特別な豆』にしたことと、自分の部屋に尋ねてきたことがどう関係してくるのか?
嫌な予感が止まらないアクセルは、
チラリと自分の横に座っていながらこれまで一言も話さないアルフミィを見た。
アクセルの視線に気づいたのか、彼女は薄く笑ってある包みを取り出した。

「豆・・・、今年は私が作ってみましたの」
「お前が?」
「はいですの・・・。豆まき、興味ありましたので・・・」

手の平にある小さな包みをズズイとアクセルの前に差し出すアルフィミィ。

「これがそうですの」
「そ、そうか・・・」
「アクセル・・・」
「なんだ?」

ジーッと見つめてくるアルフィミィにアクセルの悪寒は止まらない。
そして彼女は予想をまったく裏切らない言葉を口にした。

「味見、お願いしたいですの」
「!!??(やはり、か)」

脂汗を浮かせながら目の前にある包みを睨む。

「(食べてはダメだ、と体中が拒絶しているんだな、これが)」
「アクセル隊長」
「なんだ?」
「そのように警戒なさりやがらなくても、
 私も食べてみましたが人体には無害ですのことよ・・ウフ」
「お前は人間ではないだ・・・・っと」

慌てて言葉をつむぐアクセル。
申し訳なさそうにラミアを見れば少しだけ悲しげに微笑んでいた。

「ひっどーい!人間じゃない子にアクセルちゃんってばあーんなことやこー・・むぐぐぐぐ」
「お前は黙っていろ!今のは完全に俺の失言だ!・・・認める・・」
「お前だなんて・・・お姉さんに向かって口の聞き方がなってないわよん?」
「・・・1歳しかかわらないだろうが・・!とにかく・・・!!俺は食べん!」
「ふぅん?」

断るアクセルに対し嫌な笑みを浮かべるエクセレン。
そんな笑顔に対峙するとどうしてもアクセルは悪寒が止まらずタジタジしてしまう。
なぜならその笑みを浮かべた時のエクセレンの次の行動は決まっているからだ。

「わかった・・・分かったから何も言うな・・・!」
「私はまだ何も言っていないわよ?」
「まだ、ということは言う気だったんだろ?・・・ふぅ・・・アルフィミィ」
「はいですの」

手を伸ばしと、チョンと袋を乗せてくれるアルフィミィ。
エクセレンを睨みつつ、袋の紐を解いてアクセルは豆を1つ摘んで口に入れた。

「(・・・味は・・・普通だな)」











そして1つ食べ、2つ食べ・・・5つめを食べた時、
何を思ったのかエクセレンは話しかけてきたのだった。

「ねーえ?」
「フッ、なにかな?きちんと食べているじゃないか、ベイビー・・!!!???」

ドサッと床に大きな音が響いた。
アクセルが驚きのあまり手に持っていた豆の袋を床に落としたのだ。

「あははははは!!!やっぱり成功のようねん!アルフィミィちゃん」
「はいです。人造人間にも、人間にも効きましたですの」

ねー、と、楽しそうに両手を握り合い喜ぶ二人にアクセルはわけが分からず怒鳴る。

「一体何のことを言っているんだい?ベイビー達は・・・うっ!!??」

普段の自分とはかけはなれた話し方しか出来ず、アクセルは本当に焦った。
そんなアクセルに腹を抱えて笑うエクセレン。

「効果は抜群ね!アルフィミィちゃん特性の話し方が変る豆は」
「・・・は?」

目を瞬かせ必死にエクセレンの言葉を理解しようと頭をフル回転させる。
そして彼女の後に控えているラミアを何気なく目で捉えると、様子がおかしいことに気がつく。

「(そういえば・・ラミアのやつ・・・普段とは語尾が少し違ってなかったか?)」

ラミアの人格は大人しめのだ、とレモンから聞いたことがある。
だが今日は『大人しい』に当てはめるには当てはまらないほどあまり口を開かない。

「(そういえばアルフィミィは、人造人間にも、と言ってなかったか?)」

まさか・・・という思いでラミアを見つめていたら、
彼女は視線を逸らしエクセレンに尋ねたのだった。

「お姉さま、この豆の効き目はどれくらいでございます?・・・ウフ」
「(やはりだ!)」

理知的な目を少しだけ揺らして尋ねるラミアに、
エクセレンが「そうねぇ」と顎に手を添える。

「・・・1週間くらい?アルフィミィちゃん?」
「・・・・調合時点では・・・それくらいですの」
「そうですか・・・、おかしくもないのに語尾に『ウフ』がつくのは、
 おかしいことではございませんのことです?・・・ウフ」
「そんなことないわよ!寧ろ可愛いわ!そ・れ・に!」

エクセレンは意地悪げな笑顔を浮かべ青くなっているアクセルを指差す。

「あそこにもっと最悪になっちゃった人がいるでしょ?
 ラミアちゃんのはまだマシよん」
「き、君がいうなだよ!ベイビー!!(クソ!!どうにかならんのか?)」
「あはははははっ」

口を開くたびに某アニメのハ●ワ君のような話かたしか出来ないアクセルに大笑いするエクセレン。
そして床に落ちている豆を拾いながら恐ろしい言葉を言うのであった。

「・・・2人に効いたし・・効果は抜群。
 さっそくブリット君に試して遊ばなきゃね!」
「また彼をいじめるんですの?」
「ウフフ・・・、ブリット君とアクセルを苛めるのは私の楽しみなのよ。
 さ、行きましょ、アルフィミィちゃん!」
「・・・エクセ姉さま・・私は・・・」
「ラミアちゃんはアクセルを慰めてあげて!じゃ、ね!」

フフン、とアクセルを一瞥しアルフィミィと共に部屋を去っていくエクセレン。
最後に向けた視線は『ラミアを置いていくのだから水に流せ』と語っているようだった。











嵐がさった部屋に重たい沈黙が流れる。
ドサッと椅子に腰を下ろし、フゥ・・・と天井を見上げると、
ズズイとラミアの顔が天井に変り映った。

「!!?」
「・・・驚かせてしまいましたか・・?・・・ウフ」
「あ・・いや・・・気にすることはないよ・・・ベイビー・・・くっ」

眉間に皺を寄せ口元を押さえると、耳にクスッと笑う声が聞こえてきた。
初めて目にする笑い方に目を見開いて正面に立っているラミアを見上げた。

「アクセル隊長・・?」
「いや・・・なんでもないよ・・・。
 ただ・・・ベイビーのそんな笑い方は初めて見た気がしてね」

新しい発見だ、とふんわり微笑むを今度はラミアが驚いた顔をする。

「それをいうなら隊長の子供のような笑顔も初めてみましたです・・・ウフ」
「子供のような・・?」
「はいです・・・。でも私は普段の気取った笑い方より・・・今の方が・・・」
「・・・ラミア」

椅子から立ち上がり、そっとラミアを抱き寄せる。
以前なら考えられないような自分の行動に以前は不自然さを感じたが、
今ではごく自然に感じるようになっていた。
だまって見詰め合っていた瞳がやがて徐々に二人同時に閉じられていく。

触れ合った唇にたしかに温かい温もりを感じたとき、
アクセルはあることに気がついた。
もちろんあの豆はただの嫌がらせに他ならないのだろうが、
あの豆を食べたことで自分の中の邪な部分を追い払い、
素直に慣れたような気がしてならないのだ。


豆まきの豆により自分の中の鬼を追い払う。



・・・たまには嫌がらせにあうのも悪いものではないな、と
アクセルは思うのであった・・・・。
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