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追憶日記

管理人のくだらない日常の云々・・・

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まぁ、バカップルなんですよ、結局。







~イングラムのお年玉③~







・・・・30分後。









「待たせた」

30分の間暇を持て余していたイングラムは
コタツで寝そべっていた体勢を正し、
戻ってきたクォヴレーに視線を戻す。

「いや・・・・」

『お年玉が欲しい』と言ったイングラムに対し、
クォヴレーは一体どんなお年玉を用意してくれたのか?
子供っぽいと思いつつ胸が高鳴るのを抑えることは出来ない。
実はイングラムとしては今回『お年玉が欲しい』と拗ねてみせたのも、
あることをする前触れに過ぎないので、
クォヴレーがお年玉を用意してくれたことは全くのイレギュラーなのだ。
しかしある言葉をいて欲しいという気持ちに嘘偽りはない。
だから拗ねたのもイングラムの本心なのだ。
それだけに嬉しいというのもまた本当のことだろう。


クォヴレーの頬は少しだけ赤みを帯びていた。
この短時間で一体どんなものを用意してくれたのか。
”言葉のお年玉”という会話を交わしていたので、
なにか『言葉』を書いた紙でもくれるのだろうか?

「(だがそれだと30分はかかりすぎか?)」

ゆっくりとイングラムの横に腰を下ろすクォヴレー。
そして恥ずかしそうに小さな袋を差し出してくるのだった。

「・・・・これは?」
「・・・・お年玉だ」
「お年玉・・・・」

差し出された小さな袋を見れば鼠の形をしている。
そして中央には『お年玉』と書かれているが、
クォヴレーがこの短時間でお年玉の袋を用意できる筈はないので、
この袋はおそらく手作りなのだろう。
フフ・・・と小さく笑いながらイングラムは小さな袋を開けた。

「(・・・紙?・・・やはり何かしらの言葉が書かれているのだろうか?)」

しかし中身を取り出した瞬間イングラムは言葉を失ってしまう。
小さく折りたたまれた紙を広げてみればそこには・・・。

「クォヴレー」

あまりの嬉しさに顔を綻ばせてクォヴレーを見れば、
体中を真っ赤に染めて俯いていた。
文字通り、顔を上げていられないほど恥ずかしい、らしい。

「短い時間で・・・た、沢山考えたんだ・・・!
 結局ソレしか思いつかなくて・・・・・」
「・・・・そうか」
「・・じ、自分でも馬鹿だとは思ったんだが・・でも・・・!」
「いや・・・嬉しい」
「・・・!?」

俯いていた顔を上げる。
それと同時に苦しいくらいに抱きすくめられるクォヴレーの華奢な身体は、
あまりの腕の強さに弓なりに撓ってしまった。

「ん・・んぅ・・・くるし・・・」
「すまない・・・だが・・・我慢して欲しい。
 今、本当に嬉しくて力加減が出来ない」
「・・・イ、イング・・・」
「・・・・こんなに素晴らしい『応え』はない」
「・・・・っ」

抱きしめていたクォヴレーを今度は自分の手で両の頬を包み込んだ。
余程苦しかったのかクォヴレーの目は涙目になっていたが、
頬は薄紅色に染まっている。

「・・・俺と・・・ずっと一緒にいてくれるんだな・・・?」

それはいつも彼が最後に問うてくる言葉。
情事のフィニッシュ時によく聞いてくる言葉。




『俺とずっと一緒にいてくれるか?』





けれどクォヴレーはいつも応えられないでいた。
なぜそんなことを聞いてくるのか理解できないからだ。
そんなことに応えなくともクォヴレーはイングラムから離れる気など毛頭ない。
だからそんな当たり前のことには応えないでいた。
けれどそんな行動が彼を不安にさせていたとは気付けなかったのだ。

「いつも応えないでいてすまなかった。
 言わなくても分かると思っていたんだ。
 ・・・・言わなければ人間の気持ちなど伝わらないのに」
「確かにそうだが・・・この『お年玉』で今までのモヤモヤなど吹っ飛んでしまった」
「そうか・・・良かった」

安心したように微笑んだクォヴレーにイングラムは軽く口付ける。

「んっ」

たったそれだけの行為でますます体中を赤く染めていくクォヴレーを
より一層愛しく思いながら改めて『お年玉』の紙を見つめた。
それは見よう見真似で作ったのか、クォヴレー手作りの『婚姻届』である。
すでにクォヴレーの名前が書かれており印も押してあった。

「フフ・・・、妻の位置に自分の名前を書いているところが可愛らしいな」
「!!?そ、それは・・・その・・・」
「ん?」
「・・・オレ、が・・・受け入れているから・・・そうかな、と・・・」
「フフフフ・・・・」

本当に嬉しいのだろう、優しい笑みを浮かべて、
イングラムは胸ポケットからペンを取り出すと夫の位置に自分の名を記入し始めた。

「!?今書くのか??」

まさかサインしてくれるとは思っていなかったのか、
驚きの声を上げれば、イングラムはおや?という顔でクォヴレーをみてきた。

「書かなければ『婚姻』は成立しない、当然だろう?」
「そ、そうだが・・・その・・・・・・・」

恥ずかしさで真っ赤なクォヴレーをよそに、
名前を記入し終えたイングラムは自分の親指を口に銜えた。

「イングラム????」
「・・・まったく・・・お前には驚かされる。
 これでは俺の用意していたサプライズが日陰をみてしまうな」
「え?・・・・わ!」

一瞬眉を顰めたかと思うと、イングラムは名前の横に母音を押していた。
自分の親指を噛み、『血番』したのだ。

「馬鹿イングラム!!なんてことを・・・!!」

直ぐにイングラムの手を手作りの婚姻届から自分の顔の前へ持ってくる。
そして親指をつかみ、躊躇なく自分の口の中へ銜えいれるのだった。

「・・・、クォヴレー」

親指の先から甘い疼きが伝わってくる。
指先で舌の愛撫を感じながら左手でそっとクォヴレーの頬を撫でる。
そして頬から手を放し自分のポケットへと手を忍ばせていく。


そのポケットにあるものこそ、イングラムからクォヴレーへのお年玉に違いなかった。
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